「人種差別的やじ」が「歓声」に変わった瞬間。


 

 どうも!Yojiです!元気ですか!?僕は元気120%です!
 
 先週から、ついにリーグ戦が始まりました。しかし、僕の『就労ビザ』手続きと、『国際移籍証明書』手続きがまだ終わってなく、リーグ戦に参加する資格が無い状況です。
 
 それでも気持ちは前向きです。チームは、本当に誠心誠意尽くして、僕のこの書類作業を行ってくれてます。この事に関しては、また後ほどの記事で、詳しく書いていこうと思います。

 
 
 
 
※前回ブログは!⇒【プロ初給料!!】(☜)

 
 

 2週間前…。
 
 
 リーグ開幕を間近に控えた我がチームは、この日、1部リーグの強豪「Motagua(モタグア)」とプレシーズンマッチを行う事になりました。
 
 モタグアは、先に開幕した1部リーグにおいて、ここまで全勝で単独首位に立っている、強豪チームです。
 
 ホンジュラスでは、以前、紹介した最強チーム「オリンピア」、僕が練習生としてプレーしていた「マラトン」、以前、練習試合を行った「レアル・エスパーニャ」、そして、この日、対戦するモタグアが、『4大ビッグクラブ』として君臨しています。

 
 

 2005年は、レンカに合流してから『全15試合連続無失点』(☜)という、完璧な結果を残しましたが、2006年は、以前、ブログでも紹介した通り、マラトン相手に初失点(☜)を喫してからというもの、その次の試合は無失点に抑えたものの、この日のモタグア戦の前に行われた2試合は、格下相手に、まさかの2試合連続失点を喫してしまいました。
 
 
 
 昨年に比べて、何か歯車が噛み合わない…。
 
 
 
 以前までは、味方と「阿吽の呼吸」とも言える抜群のコンビネーションでゴールを守れていたのに、今は、何か味方との距離が遠く感じる…。審判の判定ミスからの失点もある。運も無い…。気持ち的にも、何かもどかしさを感じながらプレーしていました。

 
 
 

 こんな状況で迎えた、強豪モタグアとの1戦…。

 
 
 

 この試合を迎えるにあたって、はっきりした事。それは、「自分は、相手が格上の方が、より良い精神状態で臨める」という事です。
 
 
 格下が相手だと、GKからしたら、失うものはあっても、得は無い…。
 
 
 けど格上が相手だと「活躍して、自分の存在をみんなにアピールしてやろう!!」と燃えてくるんです。だから、この日は、2006年になってからの嫌な流れなど感じさせないほど、良い精神状態で試合に臨めました。

 
 
 

 そして、試合開始。
 
 
 
 この日のスタメンも僕ではありませんでした。以前は「何で!?」と気にしていましたが、今は、良い意味で気にしなくなりました。
 
 そもそも、自分は『就労ビザ』手続きと、『外国籍選手登録』手続きが終わってなくて、公式リーグ戦に参加する資格がまだ無い状況だから、リーグ戦を間近に控えたプレシーズンマッチでは、そのリーグ戦に出場する資格が有る選手が優先されるのも仕方がない事です。
 
 だからと言って現状に納得はしてませんが、自分の課題も監督、コーチと話して分かったし、何より、与えられた出場機会で、無心で力を尽くす事に集中する事がベストだと考えました。

 
 

 出場機会を待ってウォーミングアップをしてる間、満員の観客から、しきりに『やじ』が飛びます。実はこの日は、僕にとってレンカのホームスタジアムでのデビュー戦だったんです。ホームなのに、やじ??
 
 観客は僕を見て、アジア人だから、しきりにそれをネタに使ったやじを飛ばしてきました。試合そっちのけで、僕が歩いたり、水を飲んだり、やる事なす事にツッコミを入れてきて、アジア人を馬鹿にして、僕はスタジアムで、完全に笑い者にされてました。

 
 
 

 「また、これ(アジア人を馬鹿にする態度、言葉☜)かよ…。」

 
 
 

 僕は正直、イラだってました。
 
 
「何でホームなのに、やじが飛ぶんだ?」
 
「彼らのアジア人に対する偏見は、どうにも改善できないものなのか?」
 
 
 …さまざまな思いが交錯する中、それでもプロとして、試合に向けてのウォーミングアップに集中します。

 
 
 

 そして、コーチから「Yoji!!」と出場が告げられました。

 
 
 

 その時です…。

 
 
 
 
 

 ワーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!
 
 ワーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

 
 
 
 
 

 満員のスタジアムが、大歓声に包まれました。

 
 
 

 その時、やじは無く、僕を応援する言葉、僕の出場を楽しみにしてる会場の雰囲気、大歓声が、胸に響きました。

 
 
 

 僕は感激しました。そして、大きな力を観客からもらいました。

 
 
 

 僕は、1-2と1点リードされた後半からの出場となりました。しかも、僕が出場する時は、ゴール前で相手のFKという、ピンチの状況でした。
 
 普通、どんなGKでも「最初のボールタッチがピンチ」というのは、嫌なものです。僕も普段なら出場を遅らせてもらう事を考えたかもしれませんが、この日は、あえてこのピンチを「最大の見せ場」と思って、この場面での出場を選択しました。

 
  

 そして、スタジアムの大歓声に後押しされて、ゴールマウスに立ちます。ピンチのはずなのに、そこに立った瞬間、思わず笑みがこぼれました。
 
 
 「こういうスタジアムの雰囲気、相手は1部リーグの強豪モタグア、そして、このピンチ……おいし過ぎる!!思いっきり楽しんでやろう!!」
 
 
 そう考えると、笑みがこぼれてくるんです。

 
 
 

 そして、モタグアの選手から、シュートが放たれました!
 
 
 
 シュートは壁を越えて、ゴールマウスに飛んできます……
 
 
 
 
 
 
 
 
 しかし、それを、僕が横っ飛びでセーブ!!
 
 
 
 
 
 
 

 観客がまた沸きます。
 
 
 こうして「最大のピンチ」を「最大の見せ場」に変える作戦は、見事に成功しました。このセーブに関しては、試合後、たくさんの人から賞賛されました。

 
 

 その後も高い集中力でゴールを守り、モタグアの猛攻を凌ぎきりました。
 
 
 
 
 
 
 そして、無失点で試合終了!!
 
 
 
 
 

 しかも、僕が出場してから味方もゴールを奪い、1部リーグ全勝のモタグア相手に「2-2」の引き分けを演じました(今期、モタグアが勝利を逃したのは、これが初めて)。
 
 
 何より、今日は味方と凄く良いコンビネーションでゴールを守れたのが一番、良かった…。以前のような「阿吽の呼吸」とも言える、抜群の連携でした。しかも無失点!!
 
 
 2006年になってから、何だかしっくりいかなかったのも、全ては自分の気持ちの問題だった事が、改めて分かりました。
 
 この日のように、良い精神状態で、無心で全力で臨めれば、例えスタメンじゃなくても、凄く充実感が得られる…。そして、この「充実感」の先に、成功があるんだと、また勉強になりました。

 
 
 

 そして、観客…。
 
 
 僕はこの日に限らず、これまでも「ホンジュラス人のアジア人に対する偏見」(☜)に困ってました。
 
 
 しかし、この日は、僕が出場するのを心待ちにしてくれている観客の気持ちが、本当に伝わってきました。
 
 
 僕は、出場が告げられた時に起こった「大歓声」を、おそらく一生、忘れられないでしょう…。
 
 
 最初に起きたやじも、チームメイトいわく「Yoji、あれは、みんなYojiを歓迎しているんだ」と言われました。あれはあれで、彼らなりの歓迎なんです。

 
 
 

 それでも、アジア人を馬鹿にした言葉を言われるのは、良い気持ちはしません。
 
 しかし、僕は以前、ブログでも書いた(☜)ように、アジア人に対する偏見に関しては、そのつど、「それは違うよ」と説いてきました。
 
 
 
 そして最近、少しずつ状況が変わってきました。
 
 
 
 チーム内で僕の事を「チノ(中国人)」と呼ぶ選手は、皆無になりました。それどころか、別の人が「チノ!」と言うと、チームメイトが「中国人と日本人は違うんだ。Yojiは日本人だ」と注意してくれるようになったんです。

 
 
 

 プロサッカー選手としても、アジア人、日本人の代表としても、文化的にも、さまざまな壁がありますが、全力で取り組む事で、ほんの少しずつですが、状況は変わってきてます。

 
 
 

 僕自身も、「プロサッカー選手」として、そして、「人間」として、また1つ成長させてもらいました。

 
 

※モタグア戦前、アマチュアの試合が行われてる、レンカのホームスタジアム。この後、観客席は満員に。

 

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「人種差別的やじ」が「歓声」に変わった瞬間。」への12件のフィードバック

  1. いつもながら海外で自分の力を思いっきり発揮されている姿に、元気をいただいてます。就労ビザについては、私も現在奮闘中!!いろいろ大変ですよね~。でも負けないぞ、と。

  2. うわ~~~!!
    そのFKを止めたシーン、見たいなあ。
    大歓声も聞きたい。
    想像するだけで鳥肌がたつね。
     
    チームの人たちが、Yojiさんを日本人だと認識してくれたことも実に嬉しいことでした。
     

  3. 読んでいて、ひしひしとYojiさんに対する風向きが変わってきている事を感じました!
    ホンジュラスのチームで、Yojiさんは初の日本人としてフィールドに立たれるわけです。
    それはゼロからのスタートというより、、むしろマイナスからのスタートでしょう。
    偏見と無知から来るゆえの野次の中からのスタート・・・この先もあなたがミスなどしようものなら、また好き勝手な事を叫ぶのでしょうね。残念な事です。
     しかしYojiさんのひたむきな姿勢から、これからその観客達も学んでゆくのだと思います。貴方のチームメイトの中に、貴方を理解し、庇い、擁護するも者が出てきたように。
     
    ・・・さぁ! なんだか、未来は明るいみたいですよ!
    お互い前向きにいきましょうね! Yojiさんがショゲようが、笑おうが、貴方を知らない者は好き勝手言うでしょう! それならば、そんなものなど気にも留めず、行こうではありませんか!
    これは、ある意味私自身にも言える事ですけど(笑)
     
    ああ、高校の事、こちらのコメントに書いておきますね!

  4. 私が書いた「日本vsホンジュラス」への書きこみありがとうございます。
    私は数年前にパナマで2年間生活しておりまして、私も「チノ」連呼の洗礼を受けました。すれ違いざまに「チャン・チョン・チン」と叫ばれたこともあります。殆んどの場合、彼らに悪意は無いので気にしないのが身の為ですよ。中南米で生きている日本人は誰でも通る道です。頑張って下さい。あのペルーのフジモリ元大統領のニックネームは「チノ」です。
    現在、私の知人がホンジュラスで生活していますので、Yojiさんのことを知らせます。
    日本の新聞にもYojiさんの名前が載るほどの活躍を期待しています。
    !Tenga buena suerte!

  5. Hi Pal, Happy Valentine\’s Day. http://comic.yam.com/class/tuu/swf/lover.swf
    I was fired, and had to quit my cafe business. Now I moved back to my hometown looking for some new job. Maybe in couple years, I could re-start my cafe business all by myself again. My MSN space has been moved to a new address. See you soon.

  6. はじめまして。
    下にコメントしている「うなさる」さんから教えてもらってこちらのブログを覗かせていただきました。
    ここホンジュラスには大勢の日本人がいますが、Yojiさんのような方が活躍されているとは知りませんでした!素晴らしいですね。

    私も昨年から国際協力の仕事でテグシガルパに生活しています。
    ホンジュラス以外にも途上国での国際協力の経験はそれなりにあるのですが、Yojiさんも書かれていた、ホンジュラス人のやる気の無さ、他力本願さ、無責任さ、そんなものに昨年は打ちのめされた数ヶ月でした。
    でも!偶然ですが、私も今年は「笑顔」をテーマにしてみているのですが、何だか毎日が楽しく、そして充実している日々です。
    笑顔にはパワーがありますね。自分も周りの人も幸せにしてくれます。

    それから、ホンジュラス人の教育の無さによる差別的な発言や振る舞い。これもよ~く分かります。
    でも、Yojiさんの周りの人たちはYojiさんを通して初めて本当の日本人を知るのだと思います。Yojiさんが誠実に勤勉に素敵に生きてさえいれば、自然と日本人に対しての尊敬の念が生まれてくるのだと思います。
    すでにレンカのチームメイトたちの態度に変化が現れていることが大きな証拠です。
    ですからいちいち気にせず、誇りをもってYojiさんらしく生きていってください。

    これまでホンジュラスのサッカーのことにはあまり関心を持っていませんでしたが、これからは楽しみのひとつになりそうです。
    仕事の同僚や住んでいるアパートの警備のおじさんなど、サッカーファンは周りに山ほどいますから、みんなとの話題も増えてうれしいです。みんなで応援しますよ!
    長々と失礼いたしました。

  7. honjamacaさん!
     
    初めまして!よくぞ遊びに来て下さいました!ホンジュラス仲間ですね!いろいろ良いお言葉をいただき、嬉しい限りです。これからもヨロシクお願いします!テグシガルパにはたくさん日本人がいるのですか?先日、ビザの手続きや選手登録の関係で、初めてテグシに行きました。なかなか気に入りました!ホンジュラス人は、良い笑顔を持ってますよね!お互い、ホンジュラスで笑顔で生活していきましょう!コメント、ありがとうございました!

  8. YOJIさん、おひさしぶりです。
    1ヶ月ほど日本にいたのですが、先日北京に戻ってきました。
     
    ピンチをポジティブに受け取るのはすばらしいことです。
    私は日本にいる間に小さな大会ですが柔道の大会に出場しまして、団体戦で3位に入賞することができました。
    準決勝戦まで、チームとしては勝ってるんだけど私は全敗だったので、かなり気持ちが凹んでいました。
    その会場はとても小さくて、観客席はありません。
    なので観客は試合場のまわりに集まってきます。
    観客と選手の距離がものすごく近い。
    準決勝戦ともなると、試合場のまわりは人だかり。
    お客さんが応援してくれてるし、お客さんのためにもがんばろう、と思いました。
    結局私は負け、チームとしても負けてしまいましたが、全力で戦ったし、終わったあとは悔しいけど良い気持ちでした。
     
    スポーツは自分の精神力が強くなければいけないけれど、お客さんとか、そのほかサポートしてくれる人の存在も大きいなと思いました。

  9. お久しぶりです。
    読み始めて、どうしてそこまでやじるのかと考えてしまいましたが、「歓迎しているんだ」の一言に納得。自分にとっては、全く理解できないやり方でも相手には好意があったりすることって外国ではよくあるのかなと思います。でも、そこで嫌な思いをしていることを理解してくれて、守ってくれる仲間がいるって本当に心強いですよね。
     
    お好み焼きの写真載せました~。昨日、家で作りました。
    今日のお昼もお弁当にして持ってきました☆
     
    ちょっと私もYojiさんのこのテーマについて書こうかなあ…。と思っています。
    書きます!!
     
     

  10. Yojiさんこんばんは!
     
    日本人への理解が少ないからこそ、相手はYojiさんをみて初めて日本人へのなんらかの印象を持つと思います。だから、今Yojiさんのそのままでますます笑顔で素敵にサッカーに打ち込んでいるだけでいいじゃないですか!「へぇー日本人もサッカーするんだー。」とサッカー好きのホンジュラス人にちょっと親しみを持ってもらえたなら、しめたものです( ^-^♪
     
    それと、私は今日教育実習を終えました(まだ日誌の記入が残ってるけどね。)
    私のクラスはわんぱくな男の子たちがたくさんいて、そのうちの大多数がサッカー大好き少年たちです。ちょっと前までは悪ガキだった子たちだったみたいですが、私にはそんなマイナスな面はみえませんでした。なぜならみんな、サッカーの話のときはキラキラしてたから。そんな子たちに是非Yojiさんみたいな人がいるんだよーということを紹介したいものです。ちなみにその男の子たちは、私が前にいたエクアドルにも興味津々でした。今度はホンジュラスの話を子どもたちにできたらもっと楽しいだろうな。ホンジュラスのたまみに、はやくなりたいです。
     
    これからもよろしくお願いしますね。
    練習ばっかりみたいですが、体には気をつけてね。
    Cuidate Mucho ya!

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