<第9回>「読者の質問」&「Yojiの回答」コーナー!~~ なぜホンジュラスはW杯に出場できないのか? ~~ (後編)


 (中編)からの「つづき」です!!

<理由 4> 「政治力、経済力が無い」

 

 

「スポーツに、政治力や経済力が関係あるのか!?」…という反論が出てきそうですが、現実には、残念ながら深い関わりがあるようです。

 

 

例えば<理由 3>で話した、「アジアのW杯出場枠が、なぜ多いのか?」に関してですが、これは、「韓国の政治力+日本の経済力により、FIFAから枠を増やしてもらった」…との説があります。

 

また、「94年アメリカW杯」では、日本がアジア最終予選でイラクに引き分けた「ドーハの悲劇」が有名ですが、その試合では、異様に「日本びいき」…つまり、異様に「イラクに厳しい」審判のジャッジが下っていた…という話もあります(確かに、ゴン中山のゴールは、明らかなオフサイドポジションだった記憶が…)。

 

 

なぜ、こんなことが起こったのか?

 

 

要するに、この時のW杯開催国であったアメリカは、政治的に仲の良くないイラクやイランにW杯に来て欲しくなかったがために、裏で何かしらの「力」が働き、このように、「イラクに厳しい」ジャッジが日本戦でも見られる事態が起こってしまったらしいのです。

 

 

事の真相は定かではありません。しかし、「政治力」と「経済力」は、スポーツの世界でも大きな影響を及ぼすのは間違いないと思います。

 

 

数年前、アメリカで行われた「ソルトレークシティー・冬季オリンピック」では、明らかに不可解なジャッジで、アメリカがメダルを獲得する試合が続出しました。

 

 

「2002年日韓W杯」においても、韓国戦で不可解なジャッジが続出し、世界中から非難を浴びました。

その日韓W杯の韓国戦で敗れ、ジャッジと韓国に対する激しいバッシングを展開したイタリアですが、そのイタリア自身の国内リーグでは、度々「八百長問題」が起こります。これでは、韓国を批判する資格は無いように思うのですが…。

 

 

日本においても、亀田兄弟の長男とランダエタとの最初の世界戦において、明らかに不可解なジャッジにより、ランダエタが敗北を喫しています。日本人として恥ずかしい出来事です。

 

 

日本は「世界第2位の経済大国」ということで、どちらかと言うと、「政治力」「経済力」で恩恵を被る立場です。得をする立場なので、こういった出来事が起こっていることに、気が付き難いのです。

 

 

しかし、ホンジュラスなど、言ってみれば「政治力」も「経済力」も無い小国は、度々、不可解かつ、不利な状況で闘わされる…という話をよく聞きます。

 

 

前回記事でも書いた、「2002年日韓W杯」の北中米カリブ海地区・最終予選で、ホンジュラスが最終戦でメキシコに敗れ、W杯出場を逃した話ですが、ホンジュラス人によれば、その試合は、どう考えても不可解な試合だったそうです。まるで、ホンジュラスがわざと負けているかのようだったとか…。

 

 

この試合に関してホンジュラス国内では、「八百長疑惑」が持ち上がっています。つまり、「ホンジュラスより裕福なメキシコが、裏金を渡して勝利を買ったのではないか?」と…。

 

 

真相は定かではありませんが、最近、中南米人の「ハングリー精神」についての記事でも書いたように、彼らにとっては「名誉」「栄光」よりも、「お金」がまず最優先されます。

 

 

中米最貧国の1つであるホンジュラスでは、「W杯出場」が決まっても満足なボーナスも支払われない可能性があります。そこに、それ以上のお金でメキシコから誘惑されたとしたら…。「お金」のためなら、簡単にサッカーも辞めてしまうほどの、ホンジュラス人です。この話も、一概に「無い」とは言い切れなさそうです…。

 

 

 

 

 

<理由 5> 「自分の非を認めない」

 

 

上に、「八百長疑惑」の話を書きましたが、実はこれこそが、ホンジュラス最大の「欠点」とも言うべきものなのです。

 

 

つまり、負けても、自分たちの非を認めず、必ず「第3者」に責任転換するのです。この場合は「八百長」という、事実かどうかすら分からないものに責任転換され、肝心の、自分たちの闘い方や戦術に対する責任を認めません。

 

 

この他にも、負ければ「審判の責任」「観客の責任」「マスコミの責任」「日本人GKの責任(笑)」…などなど、徹底して「第3者」に責任転換します。これは何もサッカーに限ったことではなく、日常生活の中でも、ホンジュラス人は自分の非を決して認めず、言い訳ばかりします。

 

 

日本のように、何でもかんでも、すぐにペコペコ頭を下げるのもどうかと思いますが(…って言うか海外でそれをやると大変なことになる)、ホンジュラスのように、自身に明らかな非がある場合でも、かたくなに責任を「第3者」に転換する姿勢は、何事においても、その「成長」の妨げになっていると痛感しました。ホンジュラス人のこの国民性には、僕もほとほと疲れ果てたほどです(笑)。

 

 

ホンジュラス人がこういう責任転換を続けている限り、W杯に出場することは不可能でしょう。

「謝罪」は全く必要ないです。ただ、「なぜ負けたのか?」だけはキッチリ分析し、強化に生かして欲しいです。

 

 

 

 

 

<理由 6> 「組織力が皆無」

 

 

ここで言う「組織力」とは、サッカーのフィールド内に限ったことではなく、試合に臨む上でのサッカー協会のサポート面など、全てをひっくるめた「組織力」の意味です。

 

 

経済力が乏しいために、満足なサポート体制が整いません。

 

 

また、実際にホンジュラスのプロチームでプレーして感じたのは、試合に向けてのコンディション調整なども、メチャクチャです。常軌を逸したトレーニングをするので、ベストコンディションどころか、試合の時にはすでに満身創痍状態です(笑)。

 

 

さらには、「給料未払い問題」や「誘拐事件」など、サッカーとは無関係な問題に、度々、足を引っ張られます。とにかくホンジュラスでは、ありとあらゆる不可解な問題が大量発生するので、サッカーに集中する、あるいはモチベーションを保つのが、極めて困難なのです。

 

 

 

また、フィールド内でも、「組織力」は皆無です。

 

 

日本が、「個人能力では劣るから、組織力で対抗」…ってサッカーなら、

 

 

ホンジュラスは、「個人能力で勝てるから、組織力はイラネー」…ってサッカーです(笑)。日本の真逆(笑)。

 

 

 

メキシコ、アメリカ、コスタリカなどは、やはり、しっかりとした「組織力」があり、「勝ち」に徹したサッカーをやってきます。そこがホンジュラスとの、大きな「違い」です。

 

 

ホンジュラスは、あまりに「個人能力」頼みの、極めて自由奔放なサッカーをします。だから、ツボにハマれば誰にも止められませんが、ツボにハマらなければ、格下にも思わぬ敗北を喫してしまいます。

 

 

ホンジュラスは、ブラジル、メキシコ、アメリカ、コスタリカ…などの強豪にはメッポウ強いのですが、逆に格下には、よく負けてしまうのです。日韓W杯予選でも、最後のメキシコ戦の敗北より、その前のトリニダード・トバゴ戦に負けたことが、出場を逃した大きな要因だと思います。

 

 

今年、行われた「ゴールドカップ(北中米カリブ海地区の王者を決める大会。アジアの『アジア杯』に相当)」においても、強豪メキシコを「2-1」で破って予選グループを首位通過している反面、パナマには負けてるし、準々決勝では、グアドループに敗北を喫しています。

 

 

…ちなみにこのメキシコ戦も、メチャクチャな試合でした(下に<動画>を貼っています)。

 

前半、ホンジュラスがPKで先制のチャンスを得るも、これを外します(外すところが、ホンジュラス「らしさ」なのです)。その後、逆にメキシコにPKを与え、先制を許します。

 

 

試合巧者のメキシコを相手に、普通ならこの展開は「ゲームオーバー」を意味するのですが、ここからのホンジュラスが凄かったです。

 

 

まず、相手のエース・ブランコを、レッドカードで退場させます。「偶然」ではありません。ホンジュラスは、「怒り屋」ブランコの性格を知っていて、わざと挑発し、案の定、ブランコはこの挑発に乗ってしまい、ホンジュラスの選手にヒジ打ちをカマして退場します。

 

 

ここら辺の「ズル賢さ」というのは、正に天下一品です。僕もホンジュラスでは、何度もブチキレさせられました(笑)。人をムカつかせる才能なら、ホンジュラス人の右に出る者はいないでしょう(笑)。

 

 

そして圧巻がホンジュラスのゴールシーンです。まず同点弾は、最終ラインからたった「2本」のパスで強固なメキシコDFを崩し、最後はトップスピードからGKをかわして、角度の無いところからゴール!!

 

 

決勝点は、ロスタイム…。サイドからのセンタリングに、ヘディング(脅威の打点!)で合わせてゴール!!打点もそうですが、一体、頭のどこに当たっているのかすら分からない、メチャクチャなヘディングが印象的です(笑)。メキシコDF陣も唖然呆然…。一見の価値ある、「ホンジュラスならでは」のゴールです!!

 

 

また、オマケですが、決勝点のヘディングの際、センタリングに対して、メキシコの選手が手を後ろに組んでいるシーンが確認できます。これは、センタリングをわざと手に当てられ、PK獲得されるのを恐れているものと思われます。ホンジュラス人なら、本当にやりますからね(練習中から、相手の手にわざとボールをぶつけたり、わざと股抜きをしたりします)。メキシコとの試合は、正に「駆け引き合戦」です!!

 

 

<動画> 「ゴールドカップ2007 グループリーグ『メキシコVSホンジュラス』」

(白が「メキシコ」、青&白が「ホンジュラス」。開催国はアメリカ) 

 ※前半、ホンジュラスPK獲得も、まさかの失敗シーン…。

  

  

 ※その直後、逆にメキシコにPKを与え、ブランコに決められるシーン。

  

 

 

 

 ※「0-1」から一気に逆転、ホンジュラス!!何か変な音楽が流れてますが(笑)、気にせずご覧下さい。

  

 

 

PK」あり、「PK外し」あり、「退場」あり、「ファインゴール」あり、「ロスタイム逆転弾」あり…もうメチャクチャ!(笑) サッカー本来の「おもしろさ」満載の、「いかにもホンジュラス!」な試合です。メキシコは、昨年のW杯に出場したメンバーが勢揃いだったのですが…。これでまた、「因縁」が深まりそうです(笑)。

 

 

<動画> 「ゴールドカップ2007 グループリーグ『キューバVSホンジュラス』」

(赤が「キューバ」、白が「ホンジュラス」)

 

ホンジュラス、「5-0」で爆勝!FWパボンは脅威の4ゴール!GKに競り勝つヘディング、巨体からは想像もできないような、華麗な足技…。やはりホンジュラスは、デンジャラスです!

 

 

 

 

「組織力」がまるで無く、やってる本人たちでさえ、試合が始まってみないと、何が起こるか分からない、破天荒なホンジュラスサッカー(笑)。

 

 

しかし、フィールド内においては、「組織力」が付けば良い…というものではありません。

 

 

かつて、アフリカのカメルーンやナイジェリアは、「個人能力」を前面に押し出したサッカーで、相手チームの脅威となっていたし、見ているファンにも「一体、何が飛び出すのか!?」とハラハラ、ドキドキさせる「魅力」を持っていました。

 

 

ところが、昨今のアフリカのチームは、変に組織化され、当時ほどの「インパクト」や「楽しさ」が見られなくなっています。あまりに「普通」なチームに成り下がってしまい、昨年のW杯に出場したアフリカチームの国名が、思い出せないほどです。カメルーンやナイジェリアに至っては、出場すらしていません…。

 

 

今や、アフリカでさえ見られなくなった、「個人能力」主体で、「組織力」を完全に無視した、自由奔放で楽しい「超攻撃サッカー」をする、ホンジュラス…。

 

 

「大物食い」あり、格下に「まさかの敗北」あり、2点取られても3点取り返す、3点取っても4点取り返される(笑)…何が起こるか分からない…。「強い、弱い」は別にして、素人にも分かるようなサッカー本来の「醍醐味」が詰まっている、ホンジュラスサッカー…。

 

 

たくさんの問題が山積みしているのは事実ですが、今後どんなにこれらの問題が改善されても(多分、改善されないけど)、「フィールド」の中で行われている、このホンジュラスサッカーの「魅力」だけは、ずっと不変であって欲しいと心から願っています。

 

 

僕はホンジュラスで、散々、嫌な思いをしました。もちろん、良い思いもしたけど、おそらく圧倒的に、嫌な思いの方が多かった気がします。あの「書類問題」などは、思い出したくもないくらいです…(過去からブログを読んで下さってる方なら、分かるかと思います)。

 

 

しかし、なぜか憎めない…。なぜか、「感謝」の気持ちが溢れてくる…。

 

 

僕に「チャンス」を与えてくれ、「人生最大の夢」を実現させてくれたホンジュラス…。

 

 

日本では、「サッカーは苦しいもの」としか感じなかった僕に、人生で初めて「サッカーが楽しい!」と思わせてくれたホンジュラス…。

 

 

サッカー界における、「天然記念物」のような存在である、奇想天外なホンジュラスサッカー…(笑)。

 

 

そんなホンジュラスを、サッカーのみならず全ての分野において、心から応援したいと思いますし、僕自身も、ホンジュラスでプレーした誇りを胸に、これからも人生を歩んでいきます。そして、1日も早くホンジュラスに「恩返し」したいと願っています。

 

 

1人でも多くの方に、ホンジュラスの「魅力」を知ってもらえれば、こんなに嬉しいことはありません。

 

 

 

貴重なご質問、誠にありがとうございました。

 

 

また何かございましたら、お気軽にご連絡下さい。

 

 

 ※前所属チーム(ホンジュラス)「CD Lenca(レンカ)」の集合写真。「あまりにもホンジュラス人と一体化し過ぎて、Yojiがどこにいるのか分からん!」って人が多い中、僕のおじいちゃん(88歳!)は、この写真を見て、一発で僕がどこにいるか分かります。さすがじゃ!

 レンカ集合写真2

 

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<第9回>「読者の質問」&「Yojiの回答」コーナー!~~ なぜホンジュラスはW杯に出場できないのか? ~~ (後編)」への2件のフィードバック

  1. Yoji さんのホンジュラスへの熱い想い、ひしひしと感じました。スペイン語の学習も大変だったのでしょうね。ホンジュラスのサッカーは、試合の主導権を相手に握らせといて隙を突く「カウンターサッカー」でしょうか?
    ピッチの状態が悪いにも関わらず、足が速くて躍動感がありますね。日本代表も、もう少しシュートにイマジネーションが付加されれば決定力も違ってくるんでしょうね。言葉では表現しにくいんですが、今の日本代表(五輪代表も含む)に足りないものが見える気がしました。ホンジュラスのホンジュラスらしさを参考に、日本の日本らしさを模索しないとダメな時期に来ているのかもしれませんね。北中米カリブ地区やホンジュラスについて考える機会を与えて下さり、ありがとうございました。

  2. geocareさん。
     
    コメントありがとうございます。
     
    やはりどうしても「ホンジュラス」のこととなると、思い入れが強いために、熱い記事になってしまいますね(笑)。
     
    ホンジュラスのサッカーは「カウンター」ではないですね。大体、どんな強豪とやっても、自ら主導権を握り、自らチャンスを創造していくサッカーです。逆に、相手の「カウンター」攻撃に弱いのです。だから、格下に徹底的に守備固めをされると、カウンター一発で敗北を喫することがよくあります。メキシコのように攻めてきてくれる相手の場合、お互いの持ち味が存分に発揮され、良い試合になります。
     
    ピッチの状態に関しては、「ゴールドカップ」のアメリカのピッチは、あれでもホンジュラス人にとっては「良い」方ですからね。ホンジュラス国内のピッチ状態は、本当に終わってます…。2つくらい、良いピッチ状態のスタジアムがあるのみで、あとは練習場もヒドイ状態ですからね。そんな中で練習するから、ああいった奇想天外な技術と身体能力が身に付いたのだと思います。
     
    ホンジュラスのサッカーを見ると、日本のサッカーに足りないものが見えてきます。
     
    逆に、日本のサッカーを見ると、ホンジュラスに足りないものが見えてきます。
     
    好対照な両国なので、ホンジュラスでプレーできたことは、「日本サッカーに足りないもの」をそのまま習得できる機会だったので、今後のサッカー人生を考えると、非常に大きな経験となりました。
     
    こちらこそ、「北中米カリブ海地区」や「ホンジュラス」のサッカーに興味すら持たない日本人が多い中、こうしていろいろ関心を持って下さり、ありがとうございました。ホンジュラスの魅力が知ってもらえただけでも、少しはホンジュラスに対して「恩返し」ができたかな~…と思います。
     
    ヨーロッパ人の監督になれば、ヨーロッパのサッカーをして、南米人の監督になれば、南米のサッカーをする…。日本はもう、こういうのを「卒業」する時期にきているのかもしれませんね。
     
    その意味では、「日本人」の岡田監督が就任すれば、「日本の日本らしさ」が出てくるんじゃないかと、僕は期待しています。
     
    いろいろと、ありがとうございました。
     
    僕も勉強になりました。
     
    また何かございましたら、お気軽にご連絡下さい。

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