読者の皆様から寄せられたご質問に対する「Yojiの回答」コーナーの、<第3回>です。一気に全部のご質問には答えられないので、日をおいて、届いたご質問から順番に答えさせていただきます。
あくまでも「Yoji個人」が感じたことを、そのまま回答させていただきますので、同じ経験をしたけど違う感じ方をした人もいらっしゃるかと思いますが、その点はご了承下さい。
<今日の質問>
「子供達のサッカーに対する想いは、他の国はどんな感じなのでしょうか?」
<Yojiの回答>
やはりこれも、国によって違いがあると思います。そこで今回も、それぞれの国ごとに、僕が感じた印象を簡単に書かかせていただきます。
「中国」
正直、「子供」がサッカーするところや、サッカーの話をしているところにあまり出くわさなかったので、詳しいことは分かりません。
ただ、大人も含め、国民全般は本当にサッカーが大好きです。サッカーの話題も多いし、休みにはサッカー場で大人もサッカーをして遊んでいます。もう、どこのグランドもサッカーする人で一杯になるくらいです。「本当に中国人は、サッカーが好きなんだな~」と強く感じました。
…しかし、こと自国代表(中国代表)のこととなると、国民は凄く厳しい視線…と言うより「諦め」といった感情を抱いているように感じました。
中国代表は、格下にはメッポウ強いのですが、逆に格上に対しては、あまりにも無抵抗に敗れ去ります。特に、同じ東アジアのライバル…日本や韓国に対しては、国民さえも「どうせ勝てっこない」と、ほぼ「諦めモード」…。かなり、冷めた視線で見ています。
その証拠に、2004年の「中国サッカーアジア杯」では、日本に対して激しいブーイングを浴びせていたのにも関わらず、決勝で中国代表が日本から得点を奪われ「1-3」となった時点で、試合終了の笛を待たず、スタジアムを後にする中国サポーターが続出しました。「ああ、やっぱり負けか…」という心境だったのだと思います。自国代表チームの「逆転」を期待していない…と言うより「そんなの不可能」だと諦めているでしょう。
しかし、中国には、個人個人は素晴らしい能力を持った選手が揃っています。ただ、どうも「北京」「大連」「上海」…など、大都市出身の選手が同じ代表チームで闘う場合、派閥争いなどが起こって、なかなかチームとして上手くまとまらないようです。
凄い「可能性」と「潜在能力」を秘めているだけに、大変、惜しい状況だと思います。
※2003年。中国・天津にて。草サッカー仲間と。
「アメリカ」
アメリカが「サッカー後進国」…と思い込んでいる日本人が、未だに多いかと思いますが、それは大きな間違いです。正直、アメリカのサッカーは、日本の1歩、2歩…先をいっている…と言っても過言ではありません。
その証拠に、「2000年シドニーオリンピック」では、日本を破って「ベスト4」進出、「2002年日韓W杯」では、何と「ベスト8」進出…と、近年の成績は日本を凌駕しています。また、「FIFAランク」も日本より上です。
実は、アメリカのサッカー人口は「世界最多」です。まだ、アメリカ国民の中では「サッカーは子供と女性のするスポーツ」…というイメージが強いようですが、実際、サッカーをしている人は、男女を問わず本当に多いです(特に若者)。
アメリカの「子供」のサッカーに対する「想い」は…。僕はアメリカ時代、「キッズ・サッカースクール」のコーチのバイトをしていたのですが、そこで彼らと接してみて、本当に心の底から「サッカー大好き!」という子供に、ただの1度も出会いませんでした。
はっきり言って、僕らの行っていた「キッズ・サッカースクール」のコーチなどは、子供の親から言わせると「ベビーシッター」と同じなのです。つまり、仕事で帰りが遅くなる親が、ベビーシッターを雇う代わりに、子供を学校の放課後にサッカースクールに通わせた方が、運動もできて、良いだろう…くらいのものなのです。
だから、大半の子供が、別に「好き」でサッカーをやってるいわけじゃない…。親の都合でやらされているだけなので、サッカースクールの際も「サッカー嫌い!やりたくない!」と、わがまま放題でした。
そんな、日本の学級崩壊の比じゃない、アメリカのわがまま放題の子供達の相手をするのは、本当、尋常じゃないほど疲れました。正に、「修羅場」です。僕とパートナーを組んでいたアメリカ人コーチは、頭痛になりました(笑)。
もちろんアメリカにも、本当にサッカーが「好き」な子供もたくさんいると思いますが、僕に限っては、そういう子供に出くわすことがありませんでした。
※2005年。アメリカ・フロリダの、グアテマラ人学校の「キッズ・サッカースクール」。見た目は「カワイイ」子供達ですが、サッカースクールの際は、「悪魔」に豹変します(笑)。
「イングランド」
「サッカーの母国」ですから、当然、「子供」もサッカーが大好きだと思います。しかし、いかんせん「1週間」と滞在した期間があまりにも短かったので、詳しいことは分かりません。確かに、国全体から「サッカー大好きオーラ」は、ビシビシと感じましたが…(笑)。
※2005年。イングランド。「サッカー好き」な子供達と。
「ホンジュラス」
ホンジュラス人にとって「サッカー」とは、人生における、数少ない「娯楽」です。とにかく老若男女を問わず、本当にサッカーが大好きです。新聞のスポーツ欄の9割9分は、サッカーの記事です。
「子供」はとにかく、場所、時間、お構いなく、ひたすらサッカーをしています。「ストリートサッカー」など、当たり前…。ストリートじゃない所でも、サッカーをします(笑)。
「こんな環境で小さい頃からサッカーしていたら、そりゃあ、奇想天外な技術も身に付くはずじゃわい…」と、妙に納得しました。
サッカーに対する「想い」は、僕が今まで行った国の中でも、ダントツで「1番」と言えます。「想い」…と言うより、もう、何て言うか「生活に欠かせないもの」って感じでしょうか…。
しかし、「サッカー好き」は山ほどいるのに、プロサッカーリーグの試合では、不思議とスタジアムが満員になることは少ないです。これはおそらく、「中米最貧国の1つ」と言われるホンジュラスでは、チケットを買うお金が無い人が多いからだと推測します。
ただ、こと「重要」な試合に関しては、スタジアムは超満員に膨れ上がります。逆に、どうでも良い試合では、ガラガラ…(笑)。ホンジュラスにはいわゆる「ミーハー」的なサッカーファンは、ほとんどいません。だから、国民のサッカーを見る目は厳しいです(みんなサッカー評論家)。
※2006年。ホンジュラスの、「裸足のサッカー少年」達!!
※2006年。とにかく、どこでもサッカー、ホンジュラス人!!(「門」が「ゴール」。GKは、これぞ正に「門番」!)
※2006年。「Yoji家」の横で「ストリートサッカー」!!この後、「Yoji家」の窓ガラスをブチ壊されました(ボール命中)。
※2006年。ホンジュラスでは、どんな山奥のド田舎にも、サッカー場が…(ゴールネット無し)。凸凹のグランドでサッカー!!痛そう…。
「ジャマイカ」
ジャマイカも滞在した期間があまり長くないので、詳しいことは分かりません。
ただ、ジャマイカ国民全般にとっての「サッカー」とは、ホンジュラスと違って「1番、メジャーなスポーツ」…というわけではないようです。ジャマイカで「1番、メジャーなスポーツ」は、おそらく「クリケット」です。クリケットの「W杯」が、ジャマイカで行われたこともあるそうです。
ちなみにジャマイカのサッカースタイルは、ホンジュラスほど「テクニカル」ではありません。「技術」的には、ホンジュラスの方が圧倒的に上です。ジャマイカのサッカーは、8割以上が「フィジカル」です。とにかく「スピード」と「パワー」…。
しかし、これこそが、我が「日本代表」が最も「苦手」とするスタイルであり、だからこそ、「98年フランスW杯」では、ジャマイカに負けてしまったのかもしれません。
また余談ですが、「98年フランスW杯」の日本戦で2得点した「ウィットモア」選手は、まだ、「ジャマイカ・ナショナル・プレミアリーグ」で現役選手として活躍しています。その他、日本戦でスタメン出場した「オナンディ・ロー」選手(知り合いました)など、「フランスW杯戦士」も何人かはまだ現役でプレーしているようです。
ジャマイカ国民にとってあの日本戦の「勝利」は、正に、国としての歴史的な出来事だったらしく、ジャマイカ人に尋ねると、みんな嬉しそうに、その「勝利」について語ってくれました。当時は国中、お祭り騒ぎになったようです。
※2006年。ジャマイカ・キングストンの「ストリートサッカー」!!素人もガタイがゴツイ!!(ちなみにこの後、このシューターがあさっての方向に飛ばしたボールを探すために、30分間、ゲーム中断)
「パナマ」
パナマ国民にとっての「1番、メジャーなスポーツ」は、残念ながらサッカーではなく、「ベースボール」です。日本の野球界にも、何人か有望な選手を送り込んでいます(オバンドー、ズレータなど)。
だから、パナマの「子供」がサッカーに対してどのような「想い」を寄せているか…今一、分かりません。ただ、1つ間違いなく言えることは、同じ中米の国でも、ホンジュラスとはサッカーに対する「想い」が全く異なるということです。
パナマでは、サッカーのメディアへの露出も、決して大きくはありません。新聞での扱いも、ホンジュラスと違って小さいです。
「パナマ代表」は近年、目覚しい成長を遂げていますが、国内リーグはサッパリです。「ストリートサッカー」をする子供も、僕はパナマで1度も目撃することがありませんでした(滞在期間が長くないので、正直、何とも言えませんが…)。
※2007年。「ドナルド・ゴンサレス」のサッカーアカデミー。
※2007年。パナマのカワイイ、サッカー少年達!!
「オーストリア」
「ヨーロッパ人は、みんなサッカー大好き!」…というイメージを、我々、日本人は持ってしまいがちですが、オーストリア人は、そうでもないのかな~…という気がします。もちろん、コアな「サッカー好き」もたくさん、いますが…。
それでも、サッカーして遊ぶ「子供」には、何度か出くわしました。「サッカー好き」な子供が多いことには、変わりないと思いますが…。
ただ、サッカーが「1番、メジャーなスポーツ」って雰囲気は、オーストリアからは感じませんし(スキーが有名なようです)、また、当然ながら、オーストリア人の中でも、サッカーに対する「想い」はかなり個人差があるようです。
正直、オーストリアに関しては、僕もそこまで詳しくは分かりません。僕はオーストリアでサッカーをしてないですしね(笑)。
※2007年。ザルツブルグのサッカー少年と!!
※2007年。バッド・オーセーにて。グラーツからやって来た「サッカー好き」な子供達と!!超カワイイ!!
※2007年。バッド・オーセーの「サッカー好き」が集まるバーにて。おじちゃん達が、ビール片手にサッカー観戦!!
長くなりました。
また何かご質問等ございましたら、ご連絡下さい。
貴重なご質問、誠にありがとうございました。
※おまけ。2007年。韓国「釜山アイパーク」のサッカー少年達。何て、恵まれた「サッカー環境」なんじゃ!?(上の「ホンジュラス」の写真と見比べてみて下さい) ちゃんと、その「ありがたみ」と「幸せ」を感じているかなぁ~??
※連絡先メールアドレス☟☟☟
cafehondurasyoji@hotmail.co.jp
ワシが書いた電子書籍!
【GKノウハウ&海外ノウハウ】
「GK情報」盛りだくさんのメルマガ!
【山野陽嗣の「GKマガ」】
フェイスブック(誰でも閲覧可能!)
【Yoji Yamano╱山野陽嗣】
ツイッター
【@yoji_yamano】
ブログその1
【GK分析&採点!元U-20ホンジュラス代表GKコーチ山野陽嗣のGKアドバイザー業務】
コーチユナイテッド
【GKセミナー動画&対談記事】
とっても勉強になりました。
ちょっとしたサッカー世界一周旅行をしたような感じです。
ブログと写真でサッカー熱の温度差をものすごく感じました。
中国人はサッカーがあまり好きじゃないのかと思ってました。
アメリカのサッカー人口がそんなに多かったのも驚きです。
それぞれの国でサッカーが一番か、そうでないか、は非常に重要でしょうね。
他に娯楽がない、というのがいいのか悪いのかわかりませんが、
様々な言語、宗教や文化、国力の差があっても、
世界中でサッカーというコミニュケーションが成立するのはつくづく不思議におもえます。
あごちさん。
コメントありがとうございます。僕もこの記事を書いた後、自分で何だか不思議な気持ちになりました(笑)。
あごちさんのおっしゃる通りで、どこの国に行っても「サッカー」でコミュニケーションが成立するのは、本当に不思議ですし、凄いことですよね!
アメリカのように、「サッカー」が別に「1番」のスポーツじゃないのにも関わらず、ムチャクチャ強い国もあって、本当、奥が深い世界です。アメリカは、元はアメリカ人じゃない、中南米からの移民も多いですし、それがサッカー人口の多さに影響をもたらしているのかもしれません。それにアメリカは、良い人材なら、外国人でもすぐアメリカ人になって、「アメリカ代表入り」しますからね(笑)。アメリカの強さは、同じ「北中米カリブ海地区」のあの超強豪メキシコをもってしても、なかなか勝てないくらいですからね(ここ数年は、アメリカがメキシコに勝ち越しています。メキシコにとってアメリカは「天敵」のようです)。
あごちさんのように感じてくれる方がいらっしゃって、僕も本当に嬉しいです。
縁があっていろんな国のサッカー事情を見ることができたので、これからも、少しでも多くの人に自分が見てきたものを伝えていければと思います。
本当にありがとうございました。