「絆」


 
 人の心境とは、時として、ある一瞬を境に、正反対のものに変わってしまうことがあります。そのことを、この3日間で、改めて感じました。
 
 
 前回の記事「MSNスペース…」で書いたように、僕の記事が、スペースのトラブルにより、消えてしまいました。
 
 実は、その「消えてしまった記事」に書いていた内容は、大まかに言うと、「現在の所属チームLenca(レンカ)に感謝し、レンカの1部リーグ昇格のために、僕の全てを捧げる」といったものです。
 
 
※「プレーオフ」が始まった、ホンジュラス2部リーグ。その最初の相手に対し、「ホーム&アウェー」のアウェーでの第1戦で「1-0」と勝利。その後、ホームでの第2戦を前に、新聞に特集記事が掲載される。

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※自身のインタビュー。難航している「書類作業」についてなどの質問に、答えました。正直、書類作業に関しては、この5ヶ月間、合う人合う人に何度も聞かれ、いちいち答えるのに疲れてしまいました。それでも「書類作業が難航して試合に出場できないが、チームの好調は嬉しいし、チームを信じている」と答えました。これは、僕の本心です。しかし、写真の下に「サブGK」書かれているのは、かなり不本意です。

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 こうして迎えた、ホームでの第2戦に、レンカは何と「5-0」の大勝を飾り、2試合合計スコア「6-0」と、圧倒的な強さを見せて、堂々の「準決勝進出」を果たしました。
 
 
 そして、先日、行われた準決勝の第1戦、アウェーで闘い、「0-0」と悪くない結果を残しました。これで、ホームで行われる第2戦で勝てば、ついに「決勝進出」という状況まで辿り着きました。
 
 
 僕は、自身の書類作業が難航し(それは僕が関与できない部分の問題が影響して難航している)、試合出場の資格が未だに与えられない状況下に置かれています。
 
 しかし、以前の記事「『壁』を越えた意味…」でも書いたように、そんな状況の中でも、チームのために、自分のために、日本で応援してくれてる人々のために、日本人の代表としてホンジュラスでプレーする者として、毎日、「笑顔」で、前向きに取り組んでいました。あの記事で書いた「元気335%」は、嘘偽りのない、僕の素直な気持ちです。
 
 
 
 それが昨日、その僕の心境が、ある一瞬を境に「正反対」なものに変わってしまいました。
 
 
 
 昨日、チームの事務室に行くと、とあるチーム関係者が、「Yoji、新たな書類作業にお金がかかったから、30ドル、払ってくれ」と、僕に言ってきました。
 
 僕は以前、「もう、書類作業にかかる費用は、全て払い終わった」との報告をチームから受けていましたから(「払い終わった」とは言っても、それを払ってるのは、選手であるこの僕です。普通なら、チームが払うべきものです)、「なぜ、またお金が必要なんだ?もう全てお金は払ったって以前、言ったじゃないか?領収書を見せてくれ」と、このチーム関係者を問い詰めました。
 
 
 すると彼は、困った顔をして、話をそらしました。
 
 
 後で、監督に聞きました。
 
 すると、このお金を請求してきたチーム関係者は、昨シーズン、別の作業で30ドル自腹を切って払ったらしく(僕とは一切、無関係な作業。そもそも僕は今シーズンからチームと契約したわけで、昨シーズンは、レンカにいなかった)、そのお金をチームの会長が払わないから、僕に「Yoji、新たな書類作業でお金がかかった」と嘘をつき、僕から30ドルを騙し取ろうとしたんです。
 
 
 
 「元気335%」、「笑顔」、「前向き」、「チームのために」…………
 
 
 ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓
 
 
 「チームに対する怒り」…………  僕の心境が、180度、変わりました。
 
 
 
 その後、コーチにも相談しましたが、「俺は知らない。それは俺の問題じゃない…」のいってんばり。
 
 
 僕がチームと契約する前、チーム関係者は、「全ての書類作業はチームが責任をもって行うから心配ない」「コーチは弁護士もしてるから、彼が全てやってくれる」と言って、僕を安心させていました。だから、「レンカと契約した」というのもあります。
 
 僕はそのことに純粋に感謝し、チームのために少しでもプラスになろうと、ここまでの5ヶ月間、書類作業が難航して試合出場の資格がもらえない状況下でも、モチベーションを落とさず、全力でプレーしてきました。
 
 
 それが、「弁護士兼任のコーチ」は、ここにきて「知らない。俺の問題じゃない」のいってんばりで、責任転換…。
 
 それでもチームに対する感謝の気持ちがあったから(試合出場の資格が無い僕にも、給料を払ってくれていた。しかし、契約したのだから給料をもらうのは、ある意味、当然ではあるし、そもそも書類作業が難航しているのは、チームの責任である)、書類作業の費用に関しても、納得はできないが、自腹を切って払ってきました。
 
 
 それが、そういう僕の気持ちを逆なでするように、「架空の請求」を僕にしてきて、お金を騙し取ろうとした…。
 
 
 
 これには完全に、キレました。
 
 
 
 今までの僕の状況も、普通の人から考えれば、「ありえない」もので、とてもじゃないけど、「前向き」に「元気335%」で取り組めるような状況じゃなかったと思います。
 
 それでも僕は、「前向き」に「元気335%」で取り組んでいました。心の底から「幸せ」を感じながら、生きていました
 
 
 この状況を「マイナス」方向に考えようとすると、いくらでも「マイナス」に変換できますが、僕はあえてそう考えず(…というか、自然に)、「プラス」思考でここまでやってきていたわけです。
 
 言い換えれば、この僕の状況は、「何か」を拍子に、途端に「マイナス」の方向へ考え方が変換してしまう危険性もはらんでいたということです。そのたびに僕はグッとこらえ、何とか「プラス」の方向をキープして前に進んできました。
 
 
 
 しかし、昨日、この「何か」が起こってしまった…。
 
 
 チームが僕からお金を騙し取ろうとした…。
 
 
 
 これまで、溜まりに溜まっていた「納得できないことに対する感情」が、この「何か」によって、一気に爆発してしまった……。
 
 
 
 昨日は、準決勝第2戦の、前日です。大一番の前の、最後の練習が行われました。
 
 
 しかし、そんな重要な日に起こった、この問題……僕の怒りは、とてもじゃないけど収まりませんでした。もはや「チームのために」とは思えないほどの状況です。練習になんか、集中できる状況じゃない…。今まで書類作業に払ったお金は、一体どうしてくれるんだ!?このまま書類作業が終わらなければ、警察に訴え、裁判を起こす……くらいの、気持ちです。
 
 
 レンカには僕を含め、3人のGKがいます。しかし、準決勝第1戦の後、起用法に不満を持ったGKが1人、酒に入り浸り、練習に来なくなりました。これで、GKは、僕を含め、2人。
 
 この日の練習では紅白戦が行われましたが、僕はチームへの不信感を示すために、練習参加を拒否しました。これでGKが1人になったチームは、僕の代わりに用具係がGKを務める……という、異常事態になりました。
 
 
 「大事な準決勝第2戦の前に、何てことをするんだYojiは!?」と、チームメイトからの信頼を失う危険性もありました。しかし、僕は、何か「行動」しなければ、誰も僕の問題の重大さに気がつかない……と考え、捨て身の行動に出たんです。
 
 
 
 結果は………。
 
 
 
 やっと、チームメイトが、僕の問題の重大さに気がついてくれました。「他人事」ではなく、ようやく「Yojiの身」になって、考えてくれるようになったんです。
 
 
 チームメイトは、「練習拒否」をした僕に対し怒りをぶつけるのではなく、「この状況なら、Yojiが怒って当然だ」と理解を示し、その上で「それでも練習には参加してくれ」と、僕をなだめました。監督も、僕の行動に、理解を示しました。
 
 
 その後、監督、キャプテンと、じっくり話し合いました。キャプテンは、僕のためにチームメイトに呼びかけ、選手間でお金を出し合って集め、僕に寄付してくれました。
 
 
 監督とも、じっくり話し合いました。監督は「そもそも、どのチームにも書類作業を行うスペシャリストがいるものだが、レンカにはいない。そこが一番の問題だ」と言いました。「書類作業を行うスペシャリスト」がいないから、監督が自ら弁護士に相談したりして、書類作業を行っていかなければならない…。
 
 その他にも監督は、「練習で必要な水や栄養ドリンクなども、チームが準備してくれないから、自腹を切って準備している。他にも、先日の試合で怪我をした選手(チームに1、2の貢献をしている貴重な選手)に対して、チームが治療代を払わないから、治療代が払えないこの選手は、未だに病院から出ることができない…。だから、俺が自腹を切って、治療代を払ってあげようと思っている。他にもチームの運営面には問題が山積で、俺も疲れているんだ」と言いました。
 
 そんな、ありとあらゆる問題を、チームが責任持って行わないがために、全て監督のところに降りかかってくる状況の中、それでも監督は、
 
 
 
 「Yojiの書類作業は、必ず、終わらせるから」
 
 
 
 …と約束してくれました。
 
 
 本来ならそれ(書類作業)は、監督の仕事じゃない。それでも、チームにそれをする人物がいないから、監督がそれをやってくれている。しかも、次から次に問題が監督に降りかかってくる中、僕のことをちゃんと考えてくれている…。
 
 
 監督は選手時代、以前、僕が練習参加していた、ホンジュラス最強チームの1つ、「Maraton(マラトン)」の伝説的プレーヤーで、ホンジュラス・プロサッカーリーグの「1シーズン最多得点記録保持者」です。
 
 そんな監督には、今シーズン、彼の古巣であるマラトンから、監督就任のオファーが、再三、届いていました。監督自ら、「もしマラトンなら、今、レンカで起こってるような問題は、決して起こらない」…と言っています。
 
 それでも監督は、給料も圧倒的にマラトンより少ないにも関わらず、レンカに残り、選手達を愛し、全力で「1部リーグ昇格」のために尽くしてくれているんです。
 
 
 
 僕の「怒り」が、収まってきました。
 
 
 
 チームメイト達もそうです。実はここ最近ずっと、結果を出してる選手達に対し、チームが約束していた「ボーナス」を払わないことで問題になっていました。そんな状況の中でも、僕の状況を考え、少ないお金ですが選手みんなで出し合い、僕に寄付してくれたんです。
 
 それに、選手達もチームに不満をかかえてる状況なのに、それでも「1部リーグ昇格」のために全力を尽くしているんです。
 
 
 僕の「怒り」が、再び、
 
 
 ↓  ↓  ↓  ↓  ↓
 
 
 「元気89%」、「笑顔」、「前向き」、「チームのために」……に、変わっていきました。
 
 
 
 もちろん、納得できないことはありますが、とりあえず今は、チームを「1部リーグ(ホンジュラス・プロサッカー界最高峰リーグ)昇格」に導くことに、全てを注ぎたいと思います。今は、とりあえず、そのことに集中する…。
 
 まだ書類作業が終わる可能性も残ってるし、酒に入り浸ってチームを離れたGKの件もあるし、ピストルを持った強盗に襲われて負傷離脱した選手の件もある(彼は今、元気に復帰してます)。何が起こるか、まだまだ分からない。
 
 チームが昇格を決める試合(今季の優勝チームと、昨季の優勝チームによって行われる、「チャンピオン・シップ」のような試合)で、いきなり出番がくる可能性だって、充分ある…。僕はまだ、「一発逆転代打サヨナラ満塁ホームラン」を諦めてはいません。
 
 
 たった3日間で、こんなにも大きな心境の変化が起こりました。そして最終的には、監督とチームメイトの温かい心により、僕は再び「笑顔」で前を向いて進めそうです。
 
 
 
 監督、チームメイトとの「絆」……。
 
 
 1部リーグに昇格し、その「絆」を、最高の形で花開かせたいと思います。
 
 
 準決勝第2戦……あと「2時間後」、キックオフです。

 

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「絆」」への6件のフィードバック

  1. 「自分を信じ、前向きに歩み続けることの大切さ」
    …それがあればどんな出来事だって、自分に価値あるものにできるんだ。
     
    Yojiさんの言葉と行動は、いつも力強いメッセージと勇気を届けてくれます。
     
    Lencaが1部昇格を果たしますように。
    Yojiさんがもっともっと凄い選手になって、伝説のゴールキーパーとなれますように。

  2.  ごんたのささみジャーキーさん。
     
     こちらこそ、みなさまからの暖かい言葉にはいつも力をもらってます。本当にありがとうございます。「前向き」は、無理をして前向きなのではなく、自然と前向きな気持ちになれるのが理想ですね。最近はその状態です。ただ今回だけは、ちょっと納得できないものがありまして、気分を害してしまいましたが…。
     
    伝説のGKは、僕もなりたいです。5年以内には日本代表に入ります!応援ヨロシクお願いします!
     
    Yoji

  3. GKがいなくなったり、監督が自腹きったり、なんだかとんでもないことになってますね。しかも、その監督もすごいですね(笑)
    すごい人がさりげなく身近にいるのが、なんだかすごいです。
     
    マラトンやJリーグなど、環境の良い所に移れば、もっと楽に、自分の仕事だけに専念して、余計な心配をせずに済むのかもしれません。でも、このような悪環境の中でいろいろ経験することが、必ず将来への財産となるはずです。もちろん、いつまでも不遇な環境に留まるのはよくないですが、いつかもっと恵まれた環境におかれたとき、今の苦労が、必ず自分を助けてくれるはず! 今のYojiさんは、流れからして絶対「キテます」から、サヨナラホームラン(サッカーなら延長ロスタイムのVゴール?)も打てそうな気がします。
     
    Yojiさんの苦労話を知った上で、日本代表の話を聞くと、ほんとに大した苦労をしてないで浅いことを言っているように感じてしょうがないのですが、不遇になっても、やけっぱちで腐りさえしなければ、いつか必ず光は見えてくるはずです! 食あたりと強盗には、ほんと気をつけてくださいねw
     
    さて、5年後に代表入りしたら、2010年、南アフリカW杯ですね!(W杯史上、アフリカ大陸で大会が行われるのは、これが初めてだそうです。) ホンジュラスで活躍してYojiさんが日の丸を背負ってくれたら、これほど嬉しいことはありません。アフリカだろうがなんだろうが、見に行っちゃいますよー(笑)

  4. こんにちは。
     
    個人としてはいい人なのに、組織が絡むとその人々がおかしな方向へ向いたり、
    おかしなことをし始めたり、いい人でなくなったりしますよね。
    それは、日本でも同じなのかなと思います。
    私もそれをいやと言うほど味わってきたし、今もはらわた煮えくり返るような気持ちなこと、
    絶対にあいつは信じないみたいな人ばかりです。いいことではないのですが。
     
    私も数日前、傷ついたことがあったんですが、それをうじうじしていてもしょうがないです。
    今も思い出して悲しくなりますが、思い出すたびに最後には私が笑ってやると思っています。
    気休めにもならないのですが、「今日もできることからコツコツと。がんばろーーー!!」ですね。

  5. お久しぶりです。
    書類って面倒ですよね。
    役所に頼んでも時間かかったり。
    でも、書類待ちで試合に出れない(しかも4ヶ月?!)だなんて、信じられません。
    契約当日には書類は揃ってるのが当たり前なんじゃないのかな~。
    チームにとってはお金を払って獲得した選手でしょー。
    早く書類問題が片付いて試合で活躍できることを(Yojiさんなら活躍するだろうけど(笑))祈ってます!

  6. きょろさん!
     
    お久しぶりです!まだ僕のブログのことを覚えていてくれたなんて、感激です。お子さんは元気に成長なさってるでしょうか?
     
    実は、何度もきょろさんのブログに行こうと試みたのですが、なぜか、開けないんです。なぜでしょう?…なんで、今回はこちらにてコメントの返信をさせていただきました。ご了承下さい。
     
    きょろさんもおっしゃる通り、お金を払って僕を獲得したんだから、早く書類作業を終わらせなくては、チームにとっても損なんですよね。けど、のんびりというか、いいかげんというか(笑)。ちなみに、イミグレーション自体も、何度も発言を変えるので、チームも困ってるようです(何度も書類の追加を請求してくる)。
     
    けど、こうしてみなさんに温かい言葉をかけてもらえることは、異国で闘う者に、本当に大きな力を与えてくれます。本当にありがとうございます。
     
    きょろさん。一蘭のラーメンがむしょうに食べたいです(笑)。

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